中小企業の業務がペーパーレス化しない3つの理由

中小企業でも以前からペーパーレス化が叫ばれています。しかし、実態はどうでしょう。出力された紙の資料をスキャンし、PDFなどのデジタルデータとして保存する「事後的ペーパーレス」に過ぎないのではないでしょうか。そもそも紙を出力せずに業務を行う「業務フローのペーパーレス化」に取り組んでいるという話は、ほとんど聞いたことがありません。筆者は、この業務フローのペーパーレス化こそが、本来の正しいペーパーレス化だと思っています。

では、なぜ中小企業はこの「事後的ペーパーレス化」しかできないのでしょうか。その原因を考察すると、紙の資料のメリットとデメリットが見えてきます。

紙資料のメリット
中小企業のペーパーレス化がなぜ進まないのかという話題においては、よく次のような言い訳があがってきます。
「顧問先がアナログで紙資料を渡してくるから、業務が紙中心でペーパーレス化が進まないんですよね」
しかし、よく考えてみると、事務所の中の職員同士の資料のやり取りにおいても、紙が出力されていることに気がつきます。
つまり、顧問先から預かる資料が紙なのかどうかという話ではなく、中小企業内部の業務が紙中心なのです。
例えば、決算や申告書、月次で作成した試算表などをチェックしてもらう際には、作成した決算書などの資料一式はもちろん、その作成の根拠となった会社の登記簿謄本、定款、契約書、各種の別表調整や所得控除などの根拠となった計算算式に消費税の集計表、そして顧問先から預かったスキャンデータや表計算ソフトで集計した計算根拠に至るまで全て出力し、丁寧にファイリングしていませんでしょうか。筆者も以前は、全てを印刷していましたので、余るところなく出力したいという気持ちはわかります。
ではなぜ、わざわざ出力をするのかといえば、チェックする者が資料を見間違えたりチェック漏れを防ぐためです。
一つの計算ミスで税額が大きく動いてしまう申告書などのチェックについては、根拠資料などをいかに漏らさず、チェックしてもらうかが大事です。
そうすると、紙に「◯◯の根拠はこの見出しです」と指示をすれば、チェック者はまず、資料の取り違いなど起こさないはずです。つまり、紙資料というのは、情報の伝達に最適な媒体であるといえます。

デジタルの情報伝達は難しい
一方で、紙に対してデジタルデータの情報伝達は難しいということがいえます。例えば、先の例のように、申告書を別のスタッフにチェックしてもらう際には、PDFなどのデジタルデータや表計算ソフトで集計した計算根拠など、元々デジタルデータであるものを紙に出力しているのは煩雑に思うはずです。そうであるなら、理屈としては事務所のサーバーに資料を格納し、チェック者に対して該当するフォルダやファイルの場所を指示すれば、チェック者はそのデータを確認できます。そうすれば業務フローのペーパーレス化となるわけですが、実際はそう簡単ではありません。
なぜなら、この方法だと該当するフォルダを探した時に取り間違いなどのミスが発生するからです。さらに、該当するファイルを開いた時にどの資料がどこにあるのかなどを探した際の認識違いも回避できません。
そのため、複数人の事務所であれば事務所の内に社内サーバーなどを設置して共有のデジタル環境にアクセスできるにも関わらず、情報の伝達には結局は紙を使うということになっているのです。

紙の情報伝達のデメリット
紙資料は情報伝達を行いやすく、デジタルデータは情報伝達が難しい。だから、なんだかんだ言っても紙が良い。これが、中小企業に従事する者の多数派の価値観なのではないでしょうか。
ただし、紙資料の情報伝達には重大な問題があります。
それは、同じ空間かつ個人間の情報伝達には非常に優れている一方で、別空間かつ多人数の情報伝達には使えないということです。
一方で、デジタルの情報伝達は難しいと述べましたが、紙の情報伝達とは逆に、別空間かつ多人数の情報伝達や情報共有には非常に有効です。

中小企業は、同じ空間かつ個人間の情報伝達に依存している
「別空間」かつ「多人数」というキーワードが出てくると、ここまで読み進めていただいた皆さんはピンときたのではないでしょうか。
これが、中小企業のクラウド化という話に直結する話なのです。
つまり、「中小企業のクラウド化がなぜ進まないか」という問いに対する答えは、同じ空間かつ個人間の情報伝達に依存しているからなのです。
同じ空間で情報伝達をしなければいけないので、事務所に足を運ぶ。そして、紙資料に出力し個人間の情報伝達をする。そのために、多人数で業務を分業することができず、属人化していく。
結果として、クラウドというテクノロジーによって別空間かつ多人数での業務が行いやすいインフラがあるにも関わらず、それを活用できていないというのが現状なのです。
ただし、このように紙の情報伝達のメリット・デメリットと、デジタルの情報伝達のメリット・デメリットを整理していくと、何をすれば解決すればよいのかに対する答えはシンプルです。
それは、デジタルの情報伝達の精度を紙の情報伝達と同様か、それ以上にすれば良いということなのです。
この点を踏まえ、次頁からは、具体的にクラウドツールを活用したその方法を解説していきます。

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