各職員が感じる中小企業クラウド化の異なるメリット

クラウド化のメリットを感じるのはそれぞれ違う

前項では、クラウド化のメリットとして、会計帳簿の自動作成よりもむしろ情報の一元化や業務の分業化、移動時間の短縮のほうが大きいとお伝えしました。加え、享受するメリットとしては帳簿作成スタッフより所長の方が大きいと述べましたが、クラウド化への取り組みというのは程度の差こそあれ、取り組んだ全員にメリットがあるのです。
ただし、一点留意したいのが、クラウド化のメリットというのは事務所の規模や立場によって何をメリットと感じるかはそれぞれ違うということなのです。このことについて、具体的に見ていきたいと思います。

廣升健生税理士事務所の場合

前述の通り、弊事務所では、現在クラウド化による分業体制を確立しています。そこで、筆者が日々の業務でクラウド化のメリットと感じるのはこの順番になります。

廣升(所長)
1.業務の分業化
2.情報の見える化
3.移動時間
4.帳簿の自動作成
ひとりでの事務所運営の場合、一番の悩みはマンパワーが足りないことです。マンパワーが足りない点については、クラウドによる分業化によって解消できています。一方、帳簿の自動作成については、既に当該業務を分業していることから、自分自身は会計帳簿を直接作る機会はほぼありません。ですから、現在はあまりメリットを感じていないのです。

クラウドメンバー
対して、クラウドメンバーが感じるクラウド化のメリットは、下記のようになります。
1.帳簿の自動作成
2.移動時間
3.情報の見える化
4.業務の分業化
クラウドメンバーは、弊事務所から業務を受託します。基本的に、クラウドで完結する仕事は在宅で行うため、業務を早く正確に終わらせることがメリットです。つまり、筆者とは逆に、帳簿の自動作成が一番のメリットなるのです。在宅で業務を行うことで、移動時間の短縮というメリットも享受できます。

中規模の中小企業の所長、顧問先対応職員
一方で、中規模以上の中小企業の所長や顧問先対応の勤務税理士などの職員は、下記の点をクラウド化のメリットと感じるはずです。
1.情報の見える化
2.移動時間
3.業務の分業化
4.帳簿の自動作成
なぜなら、ある程度の規模になれば、クラウド化に取り組む前から程度の差こそあれ、ある程度の業務は分業化されているはずだからです。そうすると、クラウド化のメリットは分業している業務がどの程度進捗しているのか、どこに業務のボトルネックがあるのかなどの「情報の見える化」こそが一番のメリットと感じるはずです。
また、クラウド化によって情報を一元化することによって、帳簿作成スタッフなどが作成した資料を自宅のパソコンやタブレット、スマホなどでもチェックできます。そのために外出先から事務所に戻る頻度も大幅に減ることでしょう。

帳簿作成スタッフ
帳簿の作成スタッフについては、このような順番になるはずです。
1.帳簿の自動作成
2.情報の見える化
3.移動時間
4.業務の分業化

すぐに感じるメリットとしては、クラウド会計ソフトを活用した帳簿の自動作成が一番だと思います。また、会計帳簿の作成のもととなる資料の管理が楽になれば、業務の効率化は進みます。一方で、移動時間や、業務の分業化については、事務所の業務形態などを変更すれば大きなメリットになる可能性を秘めています。第二章で詳しく触れますが、弊事務所で仕事を一緒にしているクラウドメンバーは、多くが元中小企業で業務をしていた子育て中のママたちです。
彼女たちは、出産前は中小企業でフルタイム勤務していたものの、子育て中のためスキマ時間を有効活用しながら在宅で業務を行っています。
女性は、男性に比べればライフステージの変化によって働ける環境や条件が大きく変化します。そのため、クラウド化によって働く環境や条件について、選択肢を増やしておくということが非常に大きなメリットとなることでしょう。さらに、事務所の経営や運営という面においても、有用な人材が結婚や出産を機に退社せざるを得ない状況においても、クラウド化を進めることによってフレキシブルな仕事の仕方を提供できることとなります。

中小企業のクラウド化はじめの一歩
筆者がまず、第二章【意識、価値観のクラウド化】で最初にお伝えしたいのは、クラウド化のメリットについてでした。
繰り返しになりますが、
「中小企業でクラウド化に取り組むとメリットがあるのですか」
と言われれば、間違いなくあるのです。
では、具体的に誰にメリットがあるのかと聞かれれば、メリットは全員にあります。これが、答えなのです。
前述の通り、本書は中規模以上の中小企業のクラウド化をテーマにして書いています。そうした前提において、事務所をクラウド化させて効率化していこうと考えた時に、たかだか数十人の規模で、誰か特定の職員はすごくメリットがあり逆に別の職員はメリットを感じない、あるいは半信半疑という状態であれば、クラウド化は進まないのです。
一方で、事務所の職員全員がクラウド化のメリットをイメージでき、同じ方向をむいてビジョンを共有していれば、中小企業のクラウド化は必ず前進するのです。

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