中小企業のクラウド化が進まない2つの理由

(本文を仮置き後ほど修正)

中小企業のクラウド化はなぜ進まないのか

クラウド会計ソフトを導入して業務の効率化を実感していますか

早速、本編がスタートしますが、第一章では、タイトル【意識、価値観のクラウド化】の通り、従来の思考をクラウド思考に変えていただくために、私の思いの丈をできる限りお伝えしたいと思います。

ではまず、皆さんに一つお聞きします。
「皆さんの中小企業でクラウド会計ソフトを導入してみて、業務の効率化を実感できていますか」
あるいは、まだクラウド会計ソフトを導入していないという方へ。
「すでにクラウド会計ソフトを導入した知人や同業者から、実際に効率化したという声を聞いていますか」
さて、いかがでしょう。
この質問をした時に、当然ながら効率化を実感しているという方とそうでもないという方がいると思います。
その場合に、比較的小規模の中小企業ではクラウド会計ソフトの効果を実感しやすく、10〜30人程度の中規模以上の中小企業では効果を感じにくいという声を異口同音に耳にします。この中規模以上の中小企業がボリュームゾーンにあたることから、結果、クラウド会計ソフトはが浸透していないという肌感覚につながっているのだと思います。ちなみに、本書では中規模以上の中小企業のクラウド化をテーマとしています。そこで今後、「中小企業」とは中規模以上の中小企業を指しているとイメージください。
クラウド会計ソフトが浸透しない2つの理由

ではなぜ、クラウド会計ソフトによって業務が効率化した人としない人がいるのでしょうか。この理由を探っていこうと思います。
まず、中規模以上の中小企業(以下、中小企業)でにおいて効率的にクラウド会計ソフトを活用できない理由としては、2つあると考えています。
それは「中小企業の所長をはじめとした職員全体のメリットが見えない」ことと「そもそもクラウド会計ソフトを正しく使っていない」ということです。

職員全体のメリットが見えない
よく、同業者からこのような質問を受けます。
「クラウド会計ソフトの活用ができていない。どうやって活用すればよいか」
そうしたご質問を受けた時には、必ず「そもそもクラウド会計ソフトを使うメリットはなんだと思いますか」と聞き返します。
そうすると、多くの場合はこう答えます。
「銀行通帳やクレジットカードなどの自動同期と会計帳簿の自動作成ですよね」
あらかじめ断言しておきますが、クラウド会計ソフトを使うメリットが「会計帳簿の自動作成」だけ、あるいはこれが一番のメリットだと考えている時点で、【中小企業のクラウド化】つまり中小企業の業務の効率化は進みません。
視点を変えて考えてみましょう。
「会計帳簿の自動作成でメリットがあるのは誰でしょうか」
中小企業である程度以上の規模になると、一般的な組織体制は「所長」以下、「勤務税理士」や「科目合格者」「帳簿作成スタッフ」となります。このほかに総務関係のスタッフなどもいるかと思いますが、会計実務には直接携わらないので説明上は割愛します。
さて、現場で会計ソフトを使用して会計帳簿を作っているのは「帳簿作成スタッフ」ですが、この場合、組織全体にメリットがあるのかを考える必要があります。
インターネット広告やセミナーなどで目にするクラウド会計ソフトの導入事例には、「帳簿入力のスタッフの人件費がクラウド会計ソフト導入後に●分の1になりました」「人件費が大幅に削減できて効果が絶大です!」といった類の文言が並んでいます。こうした文言を見るたびに、一つの疑問が沸き起こります。「帳簿作成スタッフ」は、自分自身のメリットとして捉えるのでしょうか。
おそらく、事務所経営者(所長)の立場であれば、人件費が大幅に削減できるというメリットを感じることでしょう。反面、帳簿作成スタッフの立場からすると、帳簿作成が自動化するということは、自分の仕事がなくなるかもしれないということ。つまり、自分で自分の首を締めているに等しいのです。
すると、クラウド会計ソフトを実際に使う帳簿作成スタッフは、そのメリットを口にすることにためらいを覚えることでしょう。そのため、事務所内での共有が遅々として、その活用は進まないのです。

そもそもクラウド会計ソフトの使い方が間違っている
もう一つの理由は、帳簿作成スタッフが自分の業務負担を軽減したいという前のめりの姿勢であっても、実際にクラウド会計ソフトを使ってみると、従来の使い慣れた会計ソフトの方が使いやすく感じてしまいます。結果、クラウド会計ソフトが使われないこととなります。
筆者はこの理由について、鉄砲と刀の違いを引き合いに、従来のインストール型会計ソフトとクラウド会計ソフトを使用した会計帳簿の作成はアプローチが異なると伝えています。
具体的には、刀は一対一、近距離、そして修練が必要であるのに対して鉄砲は遠距離、複数、そして刀の使い方に比べれば修練度は低い。
会計ソフトについても、従来の会計帳簿の作り方であれば、ある特定のスタッフが事務所のパソコンにインストールされた会計ソフトを使い、借方と貸方に数字と勘定科目を正しく入力していくスキルが必要です。一方でクラウド会計ソフトを使うと、遠隔で操作できるほか、複数で業務を分担することができます。さらに、自動同期機能やデジタルデータの取り込み機能によって自動作成できるため、高度な会計知識や操作スキルがなくても業務が遂行できます。
弊事務所におけるクラウド会計ソフトを使った会計帳簿の作成方法は第5章で詳しく解説しますが、つまり今まで使い慣れた会計ソフトからクラウド会計ソフトに切り替えるというのは、全く別の武器(ツール)に持ち換えて日々の戦(仕事)をしているようなものなのです。
この正しい理解をせずにクラウド会計ソフトを使用するというのは、武器が刀から鉄砲に変わっているのに鉄砲で素振りに励んでいるようなもの。そうであれば、そもそも刀(使い慣れた会計ソフト)の方が良いと結論づけるのは至極当然のことなのです。

2つの原因を裏返せば中小企業のクラウド化は進む
クラウド会計ソフトが浸透しない2つの理由を挙げましたが、この理由を裏返して考えると、個人事務所などではクラウド会計ソフトの活用が進むというのも納得いただくことでしょう。
個人の中小企業であれば、顧問先の対応はすべてひとりで行わなければならず、会計帳簿の入力も自分自身で行う必要があります。
その業務についてクラウド会計ソフトを活用して自動化できれば、メリットこそあれデメリットは感じにくいのです。また、クラウド会計ソフトの正しい使い方も、自分自身だけが理解すれば良い。新しいツールにもスムーズに移行できるのです。
翻って、中規模以上の中小企業についても、取り上げた2つの原因を解決さえすれば良いといえるでしょう。
つまり、1つ目の理由「職員全体のメリットが見えない」は、裏を返せば所長をはじめとした職員全体が強烈なメリットが感じることができるなら、クラウド会計ソフトの活用はもちろん、中小企業全体のクラウド化が進みます。
また、2つ目の理由「そもそもクラウド会計ソフトを正しく使っていない」についても、クラウド会計ソフトという視点だけではなくそもそもクラウドにはどういうメリットがあり、逆にデメリットがあるのかを正しく理解すればメリットを活かした活用方法も見えてくると捉えることができるでしょう。

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