freeeの正しい使い方①【税と経営】連載記事アーカイブス

第8回 クラウド会計freeeによる登録方法

第8 回 freeeの正しい使い方①【税と経営】連載記事アーカイブス

今回はクラウド会計のトップシェアである、クラウド会計ソフトfreee(フリー)(以下freee)について解説します。第4 回「クラウド会計の比較」においては人気のクラウド会計ソフトとしてfreee とMFクラウドの比較をさせていただきました。その回でも触れましたが、freee は従来の会計ソフトに比べて独特なユーザーインターフェースであり、私は正直に申しまして、最初に見た時はどこから会計帳簿の作成をすればよいのか戸惑いました。ただし、開発しているコンセプトや仕組みを理解すればするほど、従来から当たり前のように行ってきた、会計帳簿の作成のアプローチを根本から見直すものだと理解できました。

今回取り上げる内容はfreee の主な会計帳簿の作成方法である【自動で経理】などの3 つの取引の登録方法と、freee の定義する【口座】の概念という2 つの論点を今回と次回の2 回にわたって解説します。この2 つの論点を理解すれば、今までの会計帳簿の作成業務がいかに非効率な作業であるかということと、今後の会計ソフトのあるべき姿を先取りしていることがご理解いただけると思います。

1 freeeによる取引の登録方法

freeeを使って日々の行う取引の登録方法は下記のとおりです。

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ホーム画面の中央にある・自動で経理・取引の登録・請求書を処理するこの3 つの方法から、取引登録を行うことになります。この取引の登録方法が、freee と従来型の会計ソフトの大きな違いです。従来型の会計ソフトでは、仕訳日記帳から複式簿記による仕訳入力を必ず行います。これはどんな取引であっても仕訳で考えて入力する必要があります。 対してfreee では、まず一つ一つの取引を人が入力しようという発想がありません。発想としては、人が介在しなくても登録できる取引は徹底的に自動化します。そして、自動化できないものだけを別の方法で登録する事になります。

2 freeeの会計帳簿の作成は自動で経理を使いこなすこと

freee の登録で一番のメインとなる機能は【自動で経理】です。この自動で経理とは、会計帳簿の作成において必要な情報である【取引日】【取引内容】【取引金額】について、金融機関やクレジットカードのデジタルデータの取引明細を取り込むことで、会計帳簿を自動で作成していくという登録方法です。この方法で登録する場合、人の判断が必要なのは例えば取引内容に【A カブシキガイシャ】とある場合に、A 株式会社との取引についての勘定科目を設定するのみで登録が完了します。また、一度勘定科目を設定した後は、翌月以降などに再度同じ取引内容があれば、勘定科目を推測するため、日々使えば使うほど登録の手間が軽減されていきます。

3 未決済の取引の登録は【自動で経理】が使えない

freee を使う上では基本的には【自動で経理】を使用して取引の登録を行いますが【自動で経理】では登録できない取引もあります。それは、発生主義や実現主義に基づいた掛売上、掛仕入などの未決済取引です。掛取引については、基本的には請求書を発行することや受取ることで取引の内容を把握することになりますので、それらの取引については【請求書の発行、受取】から登録することになるのです。

4 【未決済取引】は請求書の発行→入金→消込で完了

このような未決済の取引については【請求書の発行】機能を使い、請求書を作成する際に登録した取引先の名称や、金額などのデータを流用する形で取引登録が自動で行われます。そして請求書を作成する場合には【入金予定日】を入れることで、後の入金の履歴は【自動で経理】により、自動的にマッチングされます。未決済の取引の登録から入金による消込作業が一連の流れとして完結するという仕組みです。また請求書の受取り、掛仕入などの登録をする場合にはこの後解説する【取引の登録】と同様の登録方法となります。

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5 取引の登録は極力使用しない

3つ目の登録方法である【取引の登録】は【自動で経理】【請求書を発行する】の2 つの機能で登録出来ないような取引を登録する方法です。この機能は従来の会計ソフト同様に、一つ一つの取引ごとにfreee 内で入力する機能ですが、この登録方法を使用するのは、どうしてもデジタルデータの取引明細が準備できないなどの最後の手段の登録方法という位置づけです。

まず、取引の登録という一つ一つの取引を手入力する必要があるケースはどのような場合でしょうか?この質問をセミナーなどでお話させていただくと、きまって現金決済で紙のレシートがある場合というご回答をいただきます。確かに、現金決済のレシートは、デジタル化されていない取引明細であるため、freeeで一つ一つ登録する方法もありますが、個人的におすすめしているのは、現金決済のレシートであっても表計算ソフトに、日付、取引内容、金額の3 要素のみ書き起こし手動によりアップロードをすることで、現金決済の取引も自動で経理で登録することが可能になります。自動で経理で登録するということは、取引内容を推測したり自動で登録されるなどの自動化の恩恵をうけることができます。

また、一定規模以上のスタッフがいる法人などであれば、毎月の現金決済の経費精算を行う際に表計算ソフトで各スタッフがデジタルデータに書き起こしている場合が多いのではないでしょうか。そのデータを活用することで、一つ一つの手入力での登録の手間を軽減させることが可能です。

6 手入力が必要な取引とは

上記の様に、現金決済のレシートも外部でデジタルデータを用意して、freee に取り込む事を前提とするのであれば、freee で手入力する必要があるのは請求書の受取などで生じる掛仕入などの未決済取引のみを、手入力すれば後はすべて自動化が可能になるということになります。

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わたしがfreee の登録の方法についてレクチャーする際に、かならず喩え話の例にあげるのが全自動というキーワードつながりで全自動洗濯機の話をします。衣服を洗濯する際には、全自動洗濯機を使用するのであれば、まず発想としてはすべての洗濯物を全自動洗濯機に入れてしまえば、ボタン一つで洗濯が完了するはずですが、すべての洗濯物を全自動洗濯機に入れることはできません。例えばスーツはクリーニングに出したり、色物の服は別個に手洗いをするはずです。対して洗濯板で洗う場合には、一つ一つを手で洗うため手間が膨大にかかります。

会計帳簿の作成も全く同じ事が言える話で、従来の会計ソフトであれば、どのような取引であっても一つ一つ手入力が基本でしたが、自動化できる取引は【自動で経理】で自動登録を行う。そうでない取引については、手入力などで登録するという風にアプローチの方法を変えることで、効率性は格段に向上します。そう考えると、freee というのは、会計ソフトでありながら極力数字を会計ソフト内で入力しない会計ソフトであるという点が、従来の会計ソフトとは、一線を画す革新的な会計ソフトであるといえるのです。

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