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第3回 クラウド会計ソフトのデメリット!?【税と経営】連載記事アーカイブス

前回は、クラウド会計ソフトのメリットについて解説させていただきましたが、今回はクラウド会計ソフトのデメリットと指摘される内容について解説させていただきます。ただし、今回のタイトルはあえて【クラウド会計ソフトのデメリット!?】と『!?』を付させていただきました。

これは、私の個人的な感想ですが、一般的にクラウド会計ソフトのデメリットとされる内容についてデメリットとは、感じていない部分も多くあります。むしろデメリットとされる内容も見方を変えれば、あるいは今までの業務フローを再思考すればメリットになるかもしれませんので、今回の解説を参考にしていただければと思います。

クラウド会計ソフトのデメリット

クラウド会計ソフトの定義については、第一回の【クラウド会計ソフトとは?】で、定義しておりますが従来の会計ソフトとの大きな違いは、従来の会計ソフトがパソコンなどにインストールし入力等の作業を行うのに対して、クラウド会計ソフトはパソコンなどへのインストールは行わず、すべての作業をweb上の会計ソフトで操作します。そのため、一般的にクラウド会計ソフトのデメリットとしてあげられるのは下記の様なものです。

  1. web上の会計ソフトであるため、ネット環境がない場合には作業が出来ない
  2. クラウド会計ソフト会社のサーバーにデータを預けるため、セキュリティが不安
  3. web上で作業をするため、通信環境によって動作が緩慢で仕訳の入力がもたつく。

1.web上の会計ソフトであるため、ネット環境がない場合には作業が出来ない

まず、クラウド会計ソフトはインターネット環境がなければ、一切の作業は行うことが出来ません。これは、インストール型の従来の会計ソフトがインターネット環境がない、いわゆるオフラインでもひと通りの作業ができる事と比べると、デメリットと感じるかもしれません。例えば、会計事務所で構築しているインターネット環境が突然不具合を起こせば、業務が停止するリスクは想定されますし、出先でインターネット環境がない場合も考えられます。

ただしこの様なリスクは、インストール型の従来の会計ソフトにも当てはまることではないでしょうか。例えば、従来型の会計ソフトのリスクを考えると、会計ソフトをインストールしているパソコンが物理的に壊れてしまう事や外出先で紛失や盗難のリスク。あるいは、事務所内に構築しているサーバーなどがインターネットウィルスに感染してしまうリスクも考えられます。

この様な想定されるリスクについては、定期的にデータをバックアップし別のハードディスクに保存したり、それこそ保存したデータをクラウド上に保管するという対策を講じているのではないでしょうか。もし、そのようなリスクを無くすのであれば、すべて紙ベースでやりとりを行うと言う事になりますが、昨今の一般的な会計事務所の業務フローを考えれば、すべて紙ベースでの業務遂行は現実的ではなく、発生する可能性があるリスクに対しての対応を適切に行うべきです。

そうであればインターネット環境に不具合があった場合の対応をしておく必要がありますが、私の事務所では、クラウド会計ソフト上で作成された会計帳簿について、仕訳帳を定期的にダウンロード(エクスポート)しています。ダウンロードするデータは、会計事務所で広く一般的に使用されているインストール型の会計ソフトに取り込む事が可能ですので、インターネット環境に不具合があった場合にはインストール型の会計ソフトに会計データを取り込んで作業をする事を想定しています。

この例でいえば、従来の会計ソフトでのリスク対応は、オフラインで運用しているデータをバックアップとして、インターネット上にアップしたり別個にハードディスクなどを用意するのに対して、クラウド会計ソフトでは、インターネット上で管理しているデータのバックアップをパソコンなどのオフラインに保管するため、インターネットの活用の仕方が逆になります。ただし、どちらの方法で運用するにしてもリスクがゼロになるという事はありませんし、昨今インターネット環境のインフラは飛躍的に安定している事を鑑みれば、インターネット環境に不具合が生じるリスクよりも、パソコンなどが物理的に不具合を起こすリスクの方が高いように感じます。

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2.クラウド会計ソフト会社のサーバーにデータを預けるため、セキュリティが不安

インターネット上で会計データを管理するクラウド会計ソフトは、情報漏洩のリスクは常に意識する必要があります。クラウド会計ソフトの開発会社各社も、大手金融機関並みのセキュリティという事はアナウンスされておりますが、某大手教育関係の企業でも顧客情報の漏洩が問題になったように、リスクは常にあるという意識は持つべきだと感じます。ただし、こちらも 1のデメリットと同様に、情報漏洩の可能性はオフラインの会計データであってもゼロではありませんので、やはりリスクとどう向き合っていくかが大事です。

例えば私の事務所では、インストール型の会計ソフトを使用し紙ベースの伝票やレシートなどをお預かりして、帳簿を作成し会計税務のアドバイスなどを行う、いわゆる一般的な税務顧問サービスを提供させて頂いているお客様には、積極的にはクラウド会計ソフトへの移行を薦めておりません。言いかえれば、クラウド会計ソフトを使用した税務顧問サービスを提供させて頂いているのは、事務所のホームページなどを閲覧いただいたお客様で、そもそもクラウド会計ソフトを使用した税務顧問をお考えの方にしかクラウド会計ソフトは使用して頂いておりません。

その理由は、クラウド会計ソフトを利用する際、セキュリティに対してのリスクを『デメリット』と感じるのかそうでないのかは、お客様次第だと考えているからです。最近では、一般的なサービスとして定着している金融機関のモバイルバンキングによるインターネットからの残高照会や、振込手続きができるサービス。あるいは、クレジットカードでのネットショッピングについて、便利さは理解できてもインターネット上でプライベートな情報を扱うことに不安感を示す方は現在でも少なくないはずです。

クラウド会計ソフトでは会計データをインターネット上で管理するのですから、既存の生活や仕事の上で、他のクラウドサービスを日常的に使用していないお客様にどんなにクラウド会計ソフトのメリットを伝え、どんなにセキュリティが安全と言ったとしても『感情的にどうも不安』というものは変えることが出来ませんし、仮に情報漏洩などが生じた場合にクラウド会計ソフトの開発会社の不手際を、事務所として責任を負うことも出来ません。そのため、依頼をいただくお客様がクラウド会計ソフトだけでなく、他のクラウドサービスに対するメリット、デメリットの理解を熟知頂く必要があるのです。

3.web上で作業をするため、通信環境によって動作が緩慢で仕訳の入力がもたつく

最後は、クラウド会計ソフトで会計帳簿を作成するにあたってインストール型の会計ソフトに比して数字の入力がしにくい事や、画面変更へのタイムラグがあるなど会計ソフトとしての動きの緩慢さがあげられます。このデメリットについては、画面切り替えが遅い事に関しては従来の会計ソフトに比して、確かにデメリットだと感じます。これは、Web上のサービスであることを考えればインターネット環境に左右される部分が大きいとはいえ、なかなかインストール型の会計ソフト並にとはいかないのではないでしょうか。

ただ一方で、クラウド会計ソフトは仕訳の入力がしにくいというデメリットについては、そもそもの会計帳簿の作成をするスタンスについての考え方を変える必要があるのではないでしょうか。クラウド会計ソフトは、従来の会計ソフトと異なり会計帳簿を作成するために必要な日付や取引金額、相手先などの情報は、金融機関のモバイルバンキングで閲覧可能なデジタルデータの取引明細を取り込む事で自動作成する事を前提としています。そのため、取り込んだデータに勘定科目などを設定する以外に数字を入力する必要がありません。

また、現金で決済するレシートなどはクラウド会計ソフトにて直接入力する必要があると考えがちですが、現金決済のレシートについても表計算ソフトでデジタルデータに起こしたデータをクラウド会計ソフトに取り込むことで会計帳簿を自動作成するため、従来の会計ソフトの様に会計帳簿をひとつひとつ人が入力して作成するという発想自体がそもそもありません。もちろん、発生主義に基づく発生、実現ベースでの取引については、会計帳簿を直接入力して作成する余地はありますが、かなり限定的といえるのです。

この、会計帳簿の作成にあたっての入力がしにくいというデメリットについては、むしろどんなに入力が行い易い会計ソフトがあったとしても、人が会計帳簿の作成をすること自体の方が、数字や桁数の打ち間違いや貸借をあべこべに入力するなどの可能性を考えるとデメリットは大きいと考えます。

私の事務所にご依頼いただくお客様には、クラウド会計ソフトをご自身で使用しご依頼いただく事も少なく無いですが、作成された会計帳簿を拝見させていただくとクラウド会計ソフトであるのにひとつひとつの仕訳を、すべて手作業を入力されている方も少なくありません。もちろん、クラウド会計ソフトでも従来の会計ソフト同様の操作も可能ですが、そのようなお客様にはクラウド会計ソフトでの会計帳簿の作成について根本的な流れをレクチャーさせていただき、会計帳簿を自分自身で作成するのではなく、クラウド会計ソフトに自動で作らせるように仕組みを構築する様に指導させて頂いています。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

いかがでしょうか。一般的にクラウド会計ソフトのデメリットといわれる内容について個人的には、ほとんどデメリットとは感じておりません。例えば、インターネット環境が使えず、使用することが出来ないというのはデメリットと捉えがちですが、外出先などで端末を選ばずに通信環境があれば、クラウド会計ソフトを使用する事ができるメリットの方が断然大きいと思います。また、セキュリティのリスクについても事務所で会計ソフトデータを管理すれば、リスクの所在は会計事務所に帰属しますが、クラウド会計ソフトを使用すれば、お客様とリスクの認識を共有した上でクラウド会計ソフトで管理したほうが、事務所運営としても良いのではないのでしょうか。

最後に解説させていただいたクラウド会計ソフトについて、そもそも会計帳簿を人が入力するものではないという価値観は、経理業務の流れが構築されていればいるほど、なかなか発想の転換をすることが容易ではないかもしれません。そして、記帳代行業務を行っている職員を雇用している会計事務所にとっては、今後クラウド会計ソフトが普及してくれば、事務所運営自体が大きく変わってくるかもしれませんし、望むか望まないかに関わらず、テクノロジーの発展に伴い会計帳簿を自動で作成していくという流れは今後加速していくはずです。

そうであれば、噂に聞くようなデメリットと指摘される内容について、まずはご自身でクラウド会計ソフトを使用することで、どうすればお客様とのコミュニケーションを円滑に遂行できるのかを思案する事が建設的ではないでしょうか。

hyoushi03

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