国家資格の価値が著しく低下している

税理士という国家資格のブランド価値が著しく低下している

佐藤 留美さんの著書 【資格をとると貧乏になります】という本をご存知でしょうか。資格をとると この著書では、税理士に限らず弁護士や社労士など他の士業と言われる国家資格についての現状を豊富な取材から論じていらっしゃいます。Amazonのブックレビューなどを読むと、あまり好意的でないレビューも多くあるようですが……、弁護士や社労士の現状については詳しいことは存じないのでなんとも言えませんが、税理士の業界の現状については「よくぞ書いてくれました!」という内容でした。
・税理士業界は60代以上の税務署OBの税理士が牛耳っている現実
・インターネットの普及で顧問報酬の見える化が進んで、報酬の下落が止まらないこと
・クラウド会計ソフトfreeeなどの登場で会計事務所の基幹業務である記帳代行業務が大幅に縮小していること
など、現在の税理士業界の問題点を指摘されています。
他の士業の現場も含めて、この本の主題は【国家資格という、価値が相対的に下落していることに税理士や弁護士である士業自身がもっと自覚するべき】ということではないでしょうか。
前述のコラムのとおり、税理士試験を合格するには一定の受験勉強期間を要します。弁護士や公認会計士の試験であれば、更に難関の資格試験となり、勉強時間も多くかかるでしょう。
当然、勉強をして国家資格を目指す者としては、取った後のステータス(年収や、先生と呼ばれる肩書など)があると思うから、長く険しい受験勉強も頑張れるわけです。そうすると、資格を取得した立場にしてみれば、「自分はあれだけ大変な受験勉強をパスしてきたのだから、一定額以上の報酬もらって当然だ」と考えがちです。

一方、受験合格者がそう多くない難しい試験とはいえ、毎年一定数の合格者が生まれているのも事実。さらに言うと、過去に合格した現役税理士たちがゴロゴロと存在し、市場のパイを分け合っている現状があります。
こうした税理士の苦労はなんのその、報酬を支払うクライアントにとっては、税理士になるのにどれだけ勉強してきたかということは関係ありません。特に20代から40代前半くらいの若い経営者にとっては、士業に高い報酬を払っていた時代などは遠い昔の話。数いる税理士の中から、自分自身の必要なサービスについて的確かつ適正な報酬といえる税理士を選ぶ時代になっています。
このような類の話は、インターネットが普及した時点でどの業界でも語られた話。なにも士業に限った話ではなく、むしろそんな話をいまさらしているの?遅いよ!という声が聞こえてきそうです。
クラウドソーシングの普及によって、どのような職種であっても壮絶な価格競争が一般的になってきたのです。あらゆる業種が、こうした荒波をどうくぐり抜けて他と差別化するかと、躍起になっています。

しかしながら税理士という職業は、国家資格を取るための長い受験期間に身を捧げたことによって、資格を取ったが仕事がないという、浦島太郎状態に陥ってしまっていいるのです。
国家資格の相対的な価値、言い換えれば、クライアントが求めるサービスに対する報酬は、明らかに下落しています。
ただし、有資格者に限るという条件は拭えない。
そうであるならば、より短期間で資格を取得し実務にあたることが大事ではないでしょうか。
机上での勉強に7〜8年もかけ、他の仕事をしたり他のスキルを身につける事ができる大事な時間を税理士試験に費やし合格することが、これからの時代に賢明な選択なのか……。大きな疑問が残るところです。

次は税理士になっても独立開業したら負のスパイラルが待っているかもしれないという話

負のスパイラル

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